DAY.21 - 33 オウル湖畔のログハウス


2018/08/07 〜 08/19

Kajaaniに着いてバスから飛び降り周りを見渡すと、遠くから僕を見つけた1人の女性が、手を振りながら走ってくる。

ひろこさんとの再会。
(ひろこさんの写真全然撮ってなかった、、)
今回のこの旅は、ひろこさんにフィンランドの別荘においで、と誘われたのをきっかけに構想が始まった。
湖畔のログハウスだとは聞いていたけど、ここまで素晴らしい場所だとは思っておらず、着いた時は開いた口が塞がらなかった。。

Kajaaniから車で2時間ほど、周りには延々と続く森しかないオウル湖の湖畔に建つログハウス。
広大な土地に今はゲスト用の別宅のログハウス、最近建てた薪小屋がある。

フィンランド発祥のサウナは日本のお風呂のようにフィンランドのほぼ全ての家に備わっている。

このログハウスももちろん例外ではなく、午後3時半から薪に火を焚いて石を熱し、サウナの準備の担当は僕だった。

サウナでギリギリまで温まった後は、全裸になって目の前のオウル湖に飛び込む。
こんな世界が、こんな生き方ができるなんて知らなかった。
誇張ではなく、どこかの国の大金持ちの王族とかより遥かに豊かな暮らしだと思う。

ここは世界で最も美しい場所で、これ以上の場所なんて存在しない。しなくていい。
毎日そう思っていた。
ひろこさんとの出会いは2年前、僕の住む尾道市向島の立花という集落で行われる小さな盆踊りで知り合った。

当時僕もようやく家が見つかり、引っ越ししたばかりでアトリエになる場所を探していた。

家の近くで盆踊りの音が聴こえてきたため行ってみると、そこに長身の外国人がいたのでなんでこんなところにいるのか聞いてみた。
それがベルギーから夏の休暇に来ていたひろこさんの息子、ケンだった。
お互いの事を話し、「今は立花でアトリエを探してるんだ」と言うと母親であるひろこさんを紹介してくれたのだった。

聞けばひろこさんはかつて20代そこそこの頃、貨物船に乗って1ヶ月かけてフランスに行き各地を旅した後、ドイツでドイツ語を勉強中に今の旦那さんであるフランシスさんと知り合い結婚、その後はイギリスに住み、今はベルギー在住で家族で夏の帰省で立花に帰ってきているという事だった。
僕もかつて英語もろくに喋れぬままフランスへ行き、日本までずっと陸路で帰ってきましたというと、自分の過去と照らし合わされたのか、とても感慨深そうに頷きながらたくさんの事を話した。

その後も立花に半年近く残ったひろこさんとフランシスさんには、立花でも大変お世話になった。

食事に誘ってくださり、アトリエになりそうな空き物件情報を毎日のように連絡くださったり。

そしてベルギーに帰る事が決まった時に、「井出くんにこの家に住んでほしい」と言って下さった。

あのひろこさんが立花にいたたった半年の間で、僕はすっかりひろこさんという人間を尊敬しきっていた。

とても大変な思いをしたのであろう過去から形成された人格、人間としてかくあるべきかという確固たる強い意志。人として「気高い」とここまで感じた人はいままで会った事がなかった。会うたびにその人格に学びを得た。

そんなひろこさんから去年の夏にフィンランドの別荘に誘ってくださった時、僕は突然舞い込んできた渋谷ヒカリエでの出展準備で首もふれないような状態だった。

そして今年になってまた誘って頂いたのであった。
相変わらず忙しい事に変わりはなかったけど、ひろこさんの誘いを断りたくなかったのもあったし、なによりその誘いになにか意味があるように気がしてならなかった。(そしてまた帰国翌日からヒカリエになったわけだけど)

僕の尊敬は、間違っていなかった。
森の中の湖畔に家を建て、朝日を浴びてヨガをして、昼は野にたくさん生えているブルーベリーを摘んで、掃除と草むしりをして、泉に湧き水を汲みに行き、サウナに入って湖で泳ぎ、みんなで夕食を食べて、食後にテーブルゲームをして、おやすみと言って寝るという至極シンプルで人として一切の何の無駄がない生活がそれを裏付けていた。
僕はまだ、このような生活に行きついていない。

求めても、すぐに手に入るようなものでもない。いや、いま求めてもいない。

だからここにはずっといられない。
実際、気づけば頭の中では帰国後の事業展開の事ばかり考えていた。
それもとてもクリアな思考と決断を出すことができた。

でもぼくもいつか人として、究極なシンプルな生活に行き着いて、そこで眠るように死にたい。

そんな理想郷が存在するという現実を教えてくれたひろこさんとフランシスさんにはいくら恩を返しても足りない。

いつか僕の理想郷に自分自身が受け入れられる日が来ると信じて、今はただ、1日1日の生命を限界まで燃やすように生きていきたいと願ってやまない。


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井出雄士
Instagram / @maruigeta

フィンランド、オウル湖畔にて