DAY.01 向島→東京

 2018/07/19

出発当日。

当日にもかかわらず何も実感がない。

床に乱雑に並べられた旅の道具達はパッキングされる事を待っている。つまりまだパッキングしていない。はたして全部入るのかこれ。

今回は初めて、テント、寝袋、スリーピングマットを持って旅をする。

フィンランドからノルウェーまでの北欧ヒッチ横断の時はテント泊がメインになると思われる。
「北欧の森で夕暮れ時に1人で全裸で焚き火をしながらFishmansのLong seasonを爆音で聴く」
という死ぬまでにしたかった事を実現させるためでもある。

広島県尾道市に浮かぶ島、「向島」の集落に家とアトリエを構えている僕。

向島は例の脱走犯−ひらおくん–の件で奇しくも有名となりましたが、この度の西日本豪雨でも多くの被害が出ました。

豪雨が丸2日続き、島内各地での土砂崩れによる家の崩壊、道路閉鎖、そして水道局の浄水器自体が冠水により故障し、尾道市全体が1週間以上の長期断水を余儀なくされました。


連日の猛暑の中、ぼくも、彼女のあいかちゃんも、アトリエのなるちゃんも毎日うちの庭の井戸水を浴びてシャワー代わりにしていました。

そんな断水が復旧した翌日の出発となった。

水道水の偉大さ、そしてその利便によっていかに他者とのコミュニケーションの場が失われているかを知った、ある意味貴重な経験だった。

(尾道含む、各地の被害が復興したわけではなく、まだまだ先の見えぬ状況だらけです。今も各地で日々復興に貢献する方々に心から敬意を表します)

そんな向島での僕の日々は、朝6時半にアトリエに行き、
22時〜24時くらいまでアトリエで作業、
風呂入って寝て起きてアトリエへ、
が延々繰り返される毎日である。

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僕の出国後、アトリエに残されたなるちゃんに仕事をまかすために前日は朝までアトリエで作業、9時に起きた。

アトリエに行くとなるちゃんが僕が20歳の時から旅に必ず履いていく相棒デニムと、あらゆるところが裂けまくったバックパックをリペアしてくれていた。

頼もしい。

なるちゃんはリペアが生き甲斐らしく、リペアの時のミシンの音が違う。

なんとなくミシンの音に喜びを感じる気がする。そしてそんな風に物を直してもらうのはこっちとしてもとても嬉しい。

かつて共にインドと東南アジアを旅した際にブログを書いていた彼女のアイカちゃんは向島のチョコレート工場USHIO CHOCOLATLで働いている。うちの裏の山の上にある。


メインの道路が豪雨によって陥没&断水により長期休業を余儀なくされていたが、県外のたくさんの店が「うちに置いていいよ」と言ってくれて、今はそこに卸すために毎日チョコ作りに励み、返り血のように全身にチョコレートを浴びて帰ってくる。(現在は営業を再開されています)

18時に仕事が終わるアイカちゃんに駅まで送ってもらう。

記念に写真を撮っておいた

30年経っても写真撮られる時どんな顔すればいいのかわからない僕

今日からランナーになる!宣言のAtelier Antwerpナルワ氏

駅での寂しそうなあいかちゃん



土砂災害や路線の冠水によって長期運休となっていたJR山陽本線は偶然にも出発当日の今日、運行を再開した。


バックパックをかついで電車に飛び乗り、窓からアイカちゃんに手を振り、見えなくなると、ようやく旅の気配が高まってきた。


すかさずサブバッグからこのために持ってきたBOSEのヘッドホンを取り出し、FishmansのSeasonを再生する。

僕にとってこの曲以上に、孤独な人のために存在する曲を知らない。

旅立ちの儀式として、fishmansが作った5分40秒に意識を浸す。

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井出 雄士
Instagram / @maruigeta

モスクワ行きの飛行機内にて